● お掃除 4
お掃除というと、今年の始め母が一時退院していた頃のこと。食事の準備のために家に戻ると、寝たきりのはずの母が廊下をはいながら雑巾をかけていたという出来事がありました。
「何してんの、寝てなきゃダメじゃん!」と声をかけると、「だってあんたが拭き掃除しないから」との母の答。「ウチはそんなにきれいな家じゃ・・」と言いかけてやめました。
父が独立して町工場を始め、母も一緒働くようになってから、我が家の台所は雑然とするようになり、毎夜ゴキブリを殺すのが私の日課のようになった時期もありました。
一枚4キロもする製品を100枚近く積み上げて荷造りをする。セメントの粉にまみれながら一日中そんな仕事をした上に、仕事が終われば従業員の人達の軍手を洗濯。家に帰って食事の仕度となれば、疲れて片付けどころではないというのも当然のコト。しかし、それでも母は私や父が台所に入るのは嫌いました。そこに母なりの意地があったのでしょう。それで私も黙々とゴキブリ殺しに励んだのでありました。
そんなことを思い起こして、母から雑巾を受け取って廊下を拭きました。社長と対立して大きな会社の役員の地位を捨て、一生苦労した父も意地っ張りな人でした。
自らの能力の限界からうまくやることはできなくても、自分を不利な状況に追い込んでも、自分の心の中にあるささやかな志を捨てずに意地を張りぬく、意地を張り通す。そんな生き方を、私は親から譲り受けてきたのかもしれません。
